法則の裏側

目次

  1. 自明の理
    1. 受験番号1 (2004-09-18)
    2. 先制点とホームラン (2004-09-18)
  2. 都合のよい法則
    1. ビギナーズ・ラック (2004-09-18)

自明の理

受験番号1

受験番号1は落ちやすい

 受験番号は通常、受付順に割り振りが行われる。このとき「受験番号で1番を取るような熱心な人はむしろ落ちやすい」という法則である。

背景の考察

 さて、受験番号を割り振る必要があり、合否を気にする試験のほとんどは3倍を越える倍率である。(入試などはさらに高いことも多いだろう。)
 したがって、仮に受験者が揃ってから改めてランダムに受験番号を割り振ったとすれば、任意の番号が合格する確率は1/3を下回ると考えてよい。つまり、特に「1番」という特別な番号に注目したとして、それが不合格である場合が多かったとしても特に不思議な話ではない。

有意味であるためには

 もしも「受験番号1は落ちやすい」を特に意味のある法則として主張するには、「受験番号1の合格率が平均の合格率よりもさらに低い」ことまで述べなければならない。が、人間の感覚はそこまで敏感ではないであろう。

結論

 以上のように「受験番号1は落ちやすい」というのは、単に「一般的に入試倍率は高い水準にある」の特殊な解釈に過ぎないと考えられる。

先制点とホームラン

このチームは先制点を取ると強い

この選手がホームランを打つとチームはよく勝つ

 野球のテレビ放送において実況のアナウンサーがよく持ち出すデータである。チームの勝敗に結びつける解説を行う。

背景の考察

 野球は得点を競うゲームである。そして無得点に終わって敗北する場合もある。ということは、得点を取ればより勝利に近づく。

 したがって、先制点を取った(自チームが得点し、相手がまだ得点していない)状況が有利なのは当然である。また、ホームランを打った(同時に得点が確定する)状況もやはりチームに有利になる。

有意味であるためには

 もしもこれらの法則を意味のあるものとして主張するには、各チームの先制点を取った場合の平均勝率および各チームの通常の平均勝率を並べて評価しなければならない。ホームランにおいても同様に様々な選手がホームランを打ったときの勝率を考慮しなければならないであろう。

結論

 以上のように、これらの法則は、単に「野球では得点を取ると勝利に近づく」の特殊な解釈に過ぎないと考えられる。(スポーツにおいては明らかに状況の優劣に影響することがらを勝敗と結びつける「法則」が結構出回っているものである。)

都合のよい法則

ビギナーズ・ラック

賭け事において、初心者は往々にして幸運に恵まれる

背景の考察

 「ビギナーズ・ラックがあった」と認知され、また認知するのはどのような人たちだろうか?

 ギャンブルで成功した人ならば成果を積極的に話すことが多いだろう。同様に、はじめてギャンブルに手を出して成功すれば継続する可能性が高くなる。(一般に、人は巧く行ったことを継続する。)すると、その後に失敗を経験すれば、はじめの成功を「ビギナーズ・ラック」と説明することになる。
 対して、ギャンブルで失敗した人はその失敗談を話す機会は少ないだろう。同様に、はじめてギャンブルに手を出して痛い目を見れば、その後に継続する可能性は少なくなる。このような人はギャンブルから離れるので「ビギナーズ・ラック」についてあまり言及しない。

 さらに、ギャンブルを継続している人は、当然、成功したいという心理を持っている。このような人間は、成功談により耳を傾けやすい。(もしも失敗談も真摯に受け止めるなら、ギャンブルから足を洗う教訓を得るのだから。−興行側が利益を得るためには、ギャンブルは失敗しやすい性質を持たなければならない。)

 つまり、「ビギナーズ・ラック」は、体験談として抽出されやすく、かつ受け入れやすい素地をもっているのである。

結論

 標本に偏りが出たゆえの神話であると説明できる。初心者でギャンブルの成否を話すのは成功者に割合が大きく、かつ、成功談の方が受けいられやすいからである。

著作・制作/永施 誠
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